2020年10月31日 (筆者:比喩ちまき)
生きていると「あ、むねが苦しいな」って事が多々ある。
これは臓器的な話ではなく精神的な話だ。一応私は健康です(自称)
すぐ思い出せるかって言われると2つくらいだが語らせてもらおう。
1つ目は「カイロ」の話。
小学生の頃、ある寒い夜に福引で当たったカイロを開け、眠りに就いた。
翌朝、目を覚ますと、あんなに温かかったカイロが布団から弾き出されていた。カチカチに固まっていて冷たかった。
昔飼っていたウサギが亡くなった時くらい悲しかった。
1日しか保たないカイロ。光は強いがその命は刹那。
もう1つは「蜂退治」の話。
割かし最近の事で、季節は夏真っ盛り。私は自宅で絶賛草むしりしてたんだが、奥の藪から妙な羽音を感じたんだ。
蝉か蛾でも引っ掛かったのかと見に行くと──そこには、特徴的な巣と黄色い虫。もうおしまいや。
巣自体は未だ小さい。築城途中と言ったところか…。蜂も片手で数えられる程度が纏わり付いている。
叩くなら今…だが、いざ蜂の巣を見ると腰が引けてしまう。対処法も分からない。
調べても業者のサイトが出るばかりで、危ないから専門の方に頼もう!みたいな。
(実際危険なので専門家に頼もう!)
しかしこの令和の時代、自己対処法も出てきた。蜂スプレーを使用したり、袋に包んでみたり──
悩みに悩んだ末、私は蜂スプレーを選んだ。守る為に戦うのだ。そう、私はこの戦の一番槍。
刻は夕暮れ、決戦の時。バズーカの様なスプレー缶を構え、いざ、巣への遠距離攻撃を決行する!
驚いたのがその噴射力よ。殺虫スプレーとは比較にならない広範囲・長射程!
今までビビったジムレベルだったが、Ez8くらいには虚勢を張れたんじゃない?
噴射を受けた巣は既にビショ濡れ、蜂達も弱り果てていた。
そこにも容赦なくスプレーを噴射。噴射。噴射──そうして小さな戦いは、終わった。
何やら後処理が大事なんですってね。私は巣と亡骸を片付ける為、その場に向かう。ザッザッザッ…
突然むねが苦しくなった。
考えてみれば、虫と謂う生命に大人に成ってから触れていなかった。
テレビで観ても大抵刺して来るし、悪い印象しかなかったが…蜂もまた巣と謂う家庭を築き、繁栄を図る生命。
久方振りのこの感情をどう形容すべきだろう。フリーザを「バカヤロー!」と消し飛ばした悟空の顔になった。
そこからは勝鬨を上げる気力も無かった。試合に勝って勝負に負けた。ショボくれて晩御飯に向かう。喉を通る気もしない。
晩御飯は野菜炒めだった。塩胡椒を振った豚肉と火が通ったキャベツの甘みにご飯が進むぜ。